
CROSS TALK 02
新規事業は、
特別な人だけのものじゃない。
マイナビの全社員が応募できる、新規事業提案制度「MOVE」。
2023年から開催され、いくつもの新規事業が起案者自身の手で動き出しています。
シビアな最終審査をくぐり抜けた起案者と、MOVEの運営者。
それぞれが語る思いとは。
PROFILE

起案者
MOVE(2024)最終審査通過
K.I.
経営企画本部 部長

起案者
MOVE(2023)最終審査通過
M.O.
新領域開発室 部長

起案者
MOVE(2024)最終審査通過
H.I.
アルバイト情報事業本部 統括本部長

共同創業者
T.K.
新領域開発室

運営事務局
T.N.
新領域開発室 課長
※部署名・役職は取材当時のものです
MOVEとは?
マイナビグループで働く全社員を対象とした新規事業提案制度「MOVE」。個人またはチームのアイデアを、「マイナビの新規ビジネス」として会社に提案できます。書類審査を通過すると、社内外のメンターも加わって数か月にわたる事業実証のフェーズへ。プレゼンテーションによる最終審査会を突破すれば、応募者自身が担い手となって事業開発を牽引できます。年次や役職に関係なく、チャンスは全員に開かれています。

MOVEという、挑戦環境。
——MOVEに応募したきっかけを教えてください。K.I.さん、いかがですか。

K.I.きっかけをたどると、私が千葉支社長だった2017年ごろまでさかのぼります。マイナビが「日常生活に当たり前にある存在へ」という理念を掲げていた時期ですね。その理念を実現するには、何が必要なのか。それを探るためのバックキャスティングを、部長層、課長層を集めた勉強会の中で試みていました。10年後や20年後、理念が達成されたあとの世界観をまずイメージしてから、いまやるべきことを逆算で考えていくんです。その時に「こうなったらいいよね」と、世界観の一例としてみんなに話したアイデアがあった。それがずっと私の中に残っていて、MOVEに応募することにしました。締切の3週間前でしたね。それまではアイデアとMOVEが結びついていなかったんですが「これ、MOVE向きかも」と、本当に急に思い立って。
——3週間で準備できるものなんですね。

K.I.ちょっとギリギリすぎました(笑)。時間はなかったのですが、「この事業を一緒に成功に導いてくれる仲間は誰だろう」と、今まで一緒に仕事をしてきた人たちの顔を思い出しながら、真剣に考えました。「この人だ!」と思った今のパートナーには一度断られたんですが、必死に説得して。

T.N.1次審査を通ると、アイデアの可能性をさらに突き詰めていくための実証フェーズに入ります。この実証にもかなりパワーがかかるので、ためらう人もいるかもしれませんね。

K.I.そうなんですよ。でも「そういうことは受かってから考えようよ」と(笑)。今では、この事業に夢中になってくれています。

H.I.事業案に賛同してくれた仲間って、それだけ大事なんですよね。

K.I.でも、説得できてほんとによかったです。パートナーとの議論があったおかげで、アイデアが一回りも二回りもよくなった。私1人だったらパスできなかったんじゃないかと思います。
——H.I.さんは最初から二人で始めたそうですね。

H.I.そうですね。私の入社当初から親交の深い後輩に「一緒に新しいことを考えてみないか」と声をかけたんです。まだMOVEができる前でしたが、新規事業として会社に提出するところまでやってみようよ、と。月に1回、仕事が終わってから会議室にこもって、お互いに考えてきた事業案を持ち寄って、いろいろと議論してきました。
——自主的な取り組みに、そこまで力が入ったのはなぜですか。

H.I.その後輩と話している中で、マイナビの事業ポートフォリオにもっと新しいものを増やしたいという想いが生まれました。いろいろなことにトライしている会社ではありますが、やっぱり中心は「人材のマイナビ」。明確な強みがあるのはもちろんいいことです。けれど、K.I.さんも挙げた「日常生活に当たり前にある存在」を目指すうえでも、さらなるプラスアルファがつくれたらもっといい。そこに自分も貢献したいと思いました。マイナビって、私のように考えている社員は多いと思うんです。ただ、それを表現する機会が多くはなかった。だからこそ、MOVEという挑戦できる環境ができたのはすごくいいですよね。

会社への挑戦状として。
——「事業ポートフォリオを広げる」といえば、M.O.さんのアイデアもこれまでの事業とはかけ離れていますね。

M.O.そうですね。マイナビに実績もアセットもない領域で起案しました。「それでも事業内容や将来性で評価してもらえるのか?」という、会社への挑戦状のつもりで(笑)。ちょうど入社10年だったので、思い切って自分の殻を破ってみたいという気持ちも強かったですね。
——その新しさが評価された……という部分もあるんでしょうか。

M.O.どうでしょう。実は、最終審査ではあまり自信がなかったんです。書類審査を通過すると社外のコンサルタントがメンターとして伴走してくれるのですが、そのサポートを尊重しながらも、自分らしさを貫いてプレゼンを構成しました。やりたいようにやった分、受け入れられるのかどうか不安でしたが、評価されてホッとしました。

T.N.社員の皆さんの自由なアイデアを募集しているので、本当にいろんなアイデアが集まってきます。もちろん、マイナビとして取り組む意義があるかは判断基準の一つですが、審査では特に「どんな顧客の」「どんな課題を解決したいか」というところに重きが置かれています。

M.O.最終審査会の審査員から「発想がおもしろいね」と言っていただいたのは印象的でした。これまでにない新しさをおもしろく感じてくれた人がいたのが嬉しかったですね。
——M.O.さんが優勝した2023年、H.I.さんも最終審査に残っていましたが惜しくも落選。その悔しさをバネに、2024年に雪辱を果たされました。

H.I.そうですね。ぜひリベンジを果たしたいと自分自身も思いましたし、MOVEに参加すると、まわりから温かいリアクションがいろいろあって。最終審査会を見に来てくれた仲間から「とてもよかったです」「ぜひ再挑戦してください」というメールも届きました。運営も次回に向けてフォローを入れてくれますし、背中を押されたというのはあります。
——満を持しての再挑戦だったと。

H.I.それが、再びエントリーできるかどうか、実は微妙なところでした。私は本業がかなり忙しくなっていましたし、後輩は昇進して、管轄範囲が大きく広がった時期でした。前回と同じくらいの時間を割くのは難しいということになり、「これは無理かもしれない」と一度はあきらめかけたんです。そんな時、私たちの事業案に賛同してくれる方が現れました。その方とミーティングを実施した結果、ジョインしてもらえることになってエントリーへの道筋が見えました。最終審査会を通過できたのも、私と後輩と、そして新たにジョインしてくれた方と、3人で勝ち取れた結果だと思っています。

身近な誰かが出発点。
——事業のアイデアは、どのように生まれたんですか。

M.O.出発点は日常生活の不便さでした。「こんなサービスがあればいいのに」「こうだったらもっといいな」という、1人のユーザーとして感じたことがベースになっています。最初から事業案を持っていたわけではなく、不便さを解消するためにどうすればいいのかを考えた時の解決策が事業案になっていきました。
——K.I.さん、H.I.さんも?

K.I.そうですね。想定している顧客層が自分自身や自分の家族に近いので、個人的な思いはやっぱり強い。自分自身のことがアイデアにも反映されていると思います。マーケティングとして顧客になりえる方々にヒアリングしたんですが、その時もかなり気持ちが入りました。抱えている悩みをお聞きするうちに、こっちまで涙が出てくるようなこともあって。

H.I.私もです。自分自身のとある原体験があって、後輩もそれに近しい経験をしていました。それを社会的な課題と捉えた時、ビジネスとして解決するために自分たちにできることは何か?——それが起案のきっかけです。だからこそ、すごくリアルに「当事者意識」と「覚悟」を持って取り組めたのだと思います。
——個人的な実体験に基づいたアイデアは、応募全体でみても多いんですか?

T.N.ほとんどがそうじゃないでしょうか。そのほうが熱量が生まれやすいんだと思います。もちろん「世の中にとって必要なこととは?」という俯瞰した切り口からアイデアを生み出す方法もある。けれど、自分や家族、友人といった身近な人を「救いたい」「楽にしたい」という思いのほうが、行動力に結びつきやすいような気がします。先ほどK.I.さんがヒアリングの話をしましたが、K.I.さんは200組を軽く超える対象にヒアリングを実施されたことで、事業案がどんどんブラッシュアップされていきました。

マイナビで起業(事業開発)するということ。
——T.K.さんはM.O.さんの事業の共同創業者という立場ですが、やはりその分野に個人的な思い入れが?

T.K.それが、最初はまったくなくて。

M.O.彼は途中から合流したんです。もともとは新領域開発室のメンバーで。

T.K.事業検証をご一緒したんですが、それがめちゃくちゃおもしろかったんです。何も知らなかった分野だけに、マーケティングをしながら新しい世界を開拓しているような感覚でした。M.O.さんをサポートしながら、さまざまな業務経験を積むこともできた。ぜひこのまま、完全にM.O.さんの新規事業にジョインしたいと申し出ました。

M.O.私としても、事業を起こそうとしている分野に通じていない人がほしかったんです。起案者は事業への想いが熱い分、意見が偏ることがあると私は思います。それはメリットでもあり、デメリットでもあります。いくらその分野に詳しかったとしても、全体を代表する声にはなりえません。となると、あくまでもビジネスとして客観視したうえで、本質的な疑問やアドバイスをぶつけてくれる存在が必要です。それに、その分野の外にいる人の幸せまで考えないと、世の中に広く受け入れられるビジネスにはなりませんよね。今振り返って、彼が共同創業者としてジョインしてくれたのは事業のターニングポイントであり、必要不可欠な存在だと思っています。
——T.K.さんはもともと、学生時代に起業を経験していますよね。

T.K.はい。事業譲渡を通してマイナビに中途入社して、MOVEとはまた別のところで事業開発に取り組んでいました。ただ、あまりうまくはいっていなかったんです。テーマが既存事業やアセットを活かせる事業というのも個人的には苦しかった。マイナビには、既存事業の領域を熟知した人たちばかり。それなのに、知識も経験も圧倒的に足りない僕がそこで事業開発をする意味はなんだろうと。思い切ってまったく別の分野に飛び込んで、0から1を生み出すことに挑んでもいいんじゃないか。そんなふうに考えていたので、M.O.さんの事業ともフィットしたんでしょうね。
——学生としての起業と、マイナビでの社内起業(事業開発)。違いは感じましたか?

T.K.まず、マイナビという大企業にいながら社内起業(事業開発)に携われること自体がうれしい驚きでした。そんな機会がある会社だとはイメージしていなかったのですが、やりたいことがきちんと設計されていれば、手厚く投資してもらえる。M.O.さんを見ていると、それをいっそうリアルに感じます。学生時代との違いでいえば、大企業だけにリソースは圧倒的ですよね。投資もそうですし、さまざまな専門性を備えた人もそろっていて。かなりいい環境だと思います。

WILLを支えたいというWILL。
——T.N.さんは運営側ですが、MOVEの応募者でもあったそうですね。

T.N.第1回に応募して、書類審査で落ちました。H.I.さんと同じで、やっぱり泣きましたね(笑)。ただ、通過したみなさんのアイデアと比べると、その差は歴然だったと思います。なんといっても、WILLの熱さと厚さが違う。もともと僕は、WILLが強くない人間でした。就活でも、やりたいことがまったく見つからずに就職浪人してしまったくらいで。その反動というべきか、WILLの強い人を心から尊敬していますし、そんなみなさんをそばで支えることができる運営の仕事は天職だと思っています。「誰かのWILLを支えたい」、それが自分のWILLだったんだなと。
——運営側は、かなり踏み込んでサポートするようですね。

T.N.研修などの機会を提供するほか、社内メンターとしても起案者に寄り添います。

K.I.その寄り添い方がすごいんです。たとえば、起案者と社外メンターとのセッションにはすべて同席したり、録画を見たりで内容をすべて把握してくれています。一度、「この事業は本当に自分がやりたかったことなのか」と立ち止まってしまったことがあります。きっかけは外部メンターからの「この事業は誰のためにあるんですか」という問いかけでした。あの時はすごく苦しかったけれど、逃げずに考え抜いたからこそ、目指す世界がそれまでになくクリアになった。その苦しかった時のことも社内メンターのT.N.さんは把握した上で、いつも冷静なアドバイスをくれる。私たちにとって、T.N.さんが客観的に側に寄り添ってくれていることがすごく励みになっていたんですよね。

T.N.社会人になってから、嬉しくて泣いたことが一度だけあります。伴走していた起案者が、ついにプレゼン本番を迎えた日です。先が見えないような状態から始まって、もがきながらも懸命に前進するところをずっと見てきましたし、私も真剣にフィードバックしてきた。だからこそ、彼らのプレゼンを審査員が真剣に聞き、「うんうん」とうなずいて感心している景色に感動したんです。その後の懇親会で起案者にかけられた「T.N.もチームの1人だから」という言葉もすごく響いた。この日、明確に「これは自分の天職だ」と思いましたし、今後もマイナビ社員の挑戦をそばで支えていきたいと思いました。

新規事業は、特別な人だけのものじゃない。
——起案者のみなさんにお聞きします。MOVEに参加することで、ご自身に何か変化はありましたか?

K.I.MOVEのメソッドのようなものを得られたと思います。それに沿って物事を進めていくと、壁にぶつかりながらも一つひとつ乗り越えられる感覚がある。迷うたびにこのメソッドに立ち返ることで、前に進めたのかなと思っています。これを繰り返すことで、自分が活用できる「型」として定着してくれたらいいなと思っています。

H.I.繰り返しになりますが、本業とのバランスを取りながら起案に取り組むのはすごく大変。けれど、それを凌駕するほど楽しかった。この苦しさと楽しさは、自分にとっての学びだったと思います。

K.I.あとから思い出してみると、大変だったことって不思議と思い浮かばないんですよね。うん、私もここまで楽しかったです。

M.O.もちろん私も大変だったことはありましたが、今振り返ると顧客からいただいた嬉しい言葉が多く浮かぶので、楽しかったです。

H.I.顧客の課題を起点にサービスを考えることの重要性を、改めて知ることができたと思います。

M.O.私が振り返って思うのは、応募する前にあきらめなくて本当によかった、ということですね。「マイナビには関係のない分野だから」「まだまだ実力不足だから」——あきらめるための理由はいろいろつけられますが、振り切ったからこそ今の自分がいる。それに、支えてくれる人の温かさに気づけたのもうれしかった。人としても、社内新規事業家としても成長できたのかなと思っています。
——MOVEがあることで改めて気づける、マイナビの風土的な魅力もありそうですね。

T.N.運営の私たちだけに限らず、起案者を支援する人、応援する人がめちゃめちゃ多いんですよ。困っている人を助けずにいられないのは、マイナビの文化なんだなと改めて感じました。

T.K.それ、僕も感じます。事業を進めるうえでは、他部署と連携することも多いんです。その誰もが親身になって考え、手を動かしてくれる。部署が違っても、同じ目標に向かって熱量高く、一緒に走ってくれる仲間になれるのはマイナビのよさですよね。
——そのマイナビが、MOVEによってこんなふうに変わったら……というイメージはありますか?

T.K.H.I.さんが言ったように、マイナビの主軸は人材領域。それを超越したチャレンジは、まだまだ稀なパターンだと思います。私が新規事業をきちんと成長させることで、そんなチャレンジがあたりまえになったらいいですね。

T.N.新規事業は「特別な人がやるもの」という感覚が、まだまだマイナビの中では強いと思っています。でも、そんなことはない。WILLがあれば誰だって挑戦できますし、それを引きあげるのが運営の役割だと思っています。さらに多くの人に——そう、これから入社する人にも、ぜひ参加してほしいですね。
